吹奏楽部などでサックスを初めてしばらくたつと、教材についての悩みをもつ方もいらっしゃるのではないでしょうか?
私自身もこんな経験がありました。
ネットを検索したりもしたのですが、なかなか良い情報がなく、結局師匠に出会うまで教本のことは分かりませんでした。
そんな方のお悩み解決のため、サックス用エチュードの紹介や順番などを解説します!
Table of Contents
サックスのエチュードとは?
そもそもエチュードとは、『練習曲』のこと。基本的には練習曲、練習曲集を指して使う言葉です。
ピアノだと、ショパンのエチュードなんかが有名ですね。
日本だと『革命のエチュード』などの名前で親しまれている楽曲ですが、これも練習曲なんです!
基本的に練習曲は「その楽器の苦手な動きの克服」など何かしら目的があって作られています。例えば動画の『Op.10-12』だと、左手の技術的な部分が練習課題という感じですね。
では、サックスに向けて作られたエチュードは、どんなものがあるのでしょうか?
サックス向けエチュードの代表作一覧
ではまず、ざっくりとサックス向けに作られたエチュードをご紹介します。
- ラクール サクソフォンのための50の易しく漸新的な練習曲 全2巻
- クローゼ サクソフォンのための25の日課練習
- ブレマン サクソフォンのための20の旋律的練習曲 全2巻
- マルセル・ミュール サクソフォン教程
- 音階とアルペッジョ 基本の技術練習 全3巻
- 24のやさしい練習曲(サミ)
- 18の技術練習曲または練習曲(ベルビギエ)
- 日課技術練習曲(テルシャック)
- 30の大技術練習曲、または練習曲(スースマン)
- 53の練習曲(ベーム、テルシャック、フェルステノー)
- 48の練習曲(フェルリング)増補 色々な調性による12の新しい練習曲
- 多様な練習曲(全調整)(カンパニョリ、ドントゥ、ガヴィニェス、カイザー、クルーチェール、マザス、パガニーニ、ロードゥ)
- その他スケール、エチュード
という訳で、一覧にすると凄い数ですね...。
そして、私のパターンはこちらです。
- サクソフォーン・トレーニング・ブック(須川展也)
- ラクール サクソフォンのための50の易しく漸新的な練習曲 全2巻
- クローゼ サクソフォンのための25の日課練習
- ブレマン サクソフォンのための20の旋律的練習曲 全2巻任意の音階教本
- 18の技術練習曲または練習曲(ベルビギエ)
- 日課技術練習曲(テルシャック)
- 48の練習曲(フェルリング)増補 色々な調性による12の新しい練習曲
正直あまりやらないエチュードもありますが、有名なものをピックアップしてご紹介していきます。
「これは飛ばすかも」「これは絶対やります」などは、基本的に音大生基準です!
サクソフォーンエチュードを解説!
⓪須川展也 サクソフォーントレーニングブック
これは、中学・高校生でも使用している人が多いのではないでしょうか。
わたしも、音楽教室で教えていたときにたまーーーに使用していました。
音大に行こうと思っているのであれば、とりあえずこれを全調やりましょう!
全調できないと、プロはもちろん音大生としても相当厳しいです。
基礎として大切なものが詰まっているので、多くの人におすすめできます。
ただ、最低音から最高音まで幅広く使用するので、初心者の方や、ゆるゆると楽しみたい方にはあまりおすすめできないですね。
①ラクール サクソフォンのための50の易しく漸新的な練習曲 全2巻
まずはこちら。やらない人はいないであろう、ラクールです。
ラクールさんという方が作曲したエチュードで、全2巻各25曲、全50曲あります。
漸新的(progressive)というのは順を追って進んでいくということだそうで、その名の遠り最初はほとんど2分音符のゆっくりした曲から、最後は16分音符バリバリのテクニカルな曲までだんだんと難しくなるように並んでいます。
この曲集の素晴らしいところは、どの曲も本当に素敵で、でもしっかりと内容がつまっていること。そして練習課題がちゃんと見えてくるので、これを50曲しっかりとこなせば基礎的な技術は着実に身につくことでしょう。
音大受験などを考える人はまずこれをやります。プロでも、たまにやっているようですね。そのくらい基礎が詰まっている曲です。
②クローゼ サクソフォンのための25の日課練習
こちらはラクールがそれなりに出来るようになってきたら、並行して取り組むことが多いと思います。
特徴としては、ラクールよりもテクニカルな部分にフォーカスしたものになっていて、ひたすら16分音符の楽譜を吹くなどの内容です。
はっきり言ってしまうと、ラクールのような抒情的な感じとかはなく、少々機械的にも感じられるため、やっている人からは「飽きた」という声もちらほら…。
ただこれもラクール同様、必ず通るエチュードです。これを一冊吹きこなせるようになれば、フィンガリングなどの基礎はばっちりと言っていいでしょう。ただ一冊やり通すにはかなり根気が必要です。
③ブレマン サクソフォンのための20の旋律的練習曲 全2巻
これは、やる人やらない人いるかなと思います。難易度的にはクローゼと同じか、少し簡単くらいの位置づけですが、練習課題がちょっと違います。なのでクローゼの後にやる人も多いかも。
1曲が3ページほどにわたるため、サックスのエチュードとしては1曲がかなり長い方です。ですので聴いている先生もちょっと退屈なんじゃないかな?と正直思います。
そんなブレマンの練習課題は、明らかにスタミナです。一曲通すだけで5分前後かかったりしますので、それに耐えられるだけの口輪筋などを鍛え、安定して長時間演奏できるだけの体力、筋力、集中力を鍛えます。
④音階とアルペッジョ 基本の技術練習 全3巻
こちらはクラシックサックスの神様、マルセル・ミュールが編纂したサクソフォン教程の1つ目、まずは音階です。ただこれはやらない方も多いですね。
音階というのは皆様にもなじみのある『ドレミファソラシド―』とか『ソラシドレミファソー』みたいなものですが、そういう基本のキを学ぶものですね。
ただこの教本意外にも音階(スケール)の教本はたくさんあり、日本だと須川 展也氏が書いたものが人気なため、このマルセル・ミュールの教本は使わないことも多いです。
⑤24のやさしい練習曲(サミ)
サクソフォン教程の2冊目です。こちらも正直、飛ばす人が多い教本かなと思います。
難易度的にはラクールの1巻前半くらいでしょうか。実は自分もスキップしたので、内容あまり分かっていません...。
ラクールと同程度の難易度なので、ラクールやっている方は飛ばす方が多いですね。
⑥18の技術練習曲または練習曲(ベルビギエ)
これは音大生だと多くの人がやるんじゃないかなと思います。
これはクローゼの後にやる人が多いですね。ブレマンは指のテクニックはもちろんなのですが、スラーやスタッカートといったニュアンス、アーティキュレーションが細かく指示されているため、テクニック的にかなり安定していないとそこまで気が回りません。
一曲通して安定した技術、音色が求められます。
⑦日課技術練習曲(テルシャック)
難易度はベルビギエより若干上がるくらいですね。この辺にくるともう音大生レベルなので、吹奏楽やサクソフォーンカルテットなどのアンサンブル、サクソフォーンソロの曲などは普通に吹けるレベルです。
こちらはベルビギエ同様、エチュードの最初に調性(ハ長調、イ短調など)が書いてありますが、一番最後の26番は#7個、嬰イ短調!そして8分の6拍子ということでなかなか大変です。
シャープやフラットなどが多い曲もたくさん入っているので、譜面を読む力【読譜力】もかなり鍛えられます。
⑧30の大技術練習曲、または練習曲(スースマン)
⑨53の練習曲(ベーム、テルシャック、フェルステノー)
こちら2冊は、飛ばす人も多いかなと思います。この後紹介するフェルリングが終わったらやる方もいますね。
難易度的には、ベルビギエやテルシャック以上、フェルリング以下とされています。
⑩48の練習曲(フェルリング)増補 色々な調性による12の新しい練習曲
こちらはもうバイブルとも言えるエチュードです。全クラシック奏者がやらねばならない、免許みたいなものです。
もともとオーボエ用で、それをマルセル・ミュールがサクソフォン用にしたものですね。そして48の練習曲だと使われていない調性があった(変ハ長調、変イ短調など)がなかったため、それをミュールが付け足したものです。なので全60曲あります。
全調性にゆっくりな曲と速い曲がセットになっています。一曲一曲は短いですが、それぞれ難易度は非常に高いため、高い技術・表現力が求められます。
これが全曲音楽的にもばっちり演奏できるようになったら、一人前といえるでしょう。
⑪多様な練習曲(全調整)(カンパニョリ、ドントゥ、ガヴィニェス、カイザー、クルーチェール、マザス、パガニーニ、ロードゥ)
こんなんあったのね!?くらいマイナーです。
難易度表記がありませんが、一応全調性の曲が入っているようで、いろんな作曲家のスタイルで楽しめる感じのエチュードなのでしょうか。
正直フェルリングを終えると、もうエチュードはやらずに曲ばっかりになってくると思うので、この子をやっている人は私の周りにはいませんでしたね...。
⑫その他エチュード
ここからは、その他の有名な教本をご紹介します。
12のエチュード・カプリス(ボザ)
こちらは日本管打楽器コンクールの課題曲になるほど、かなり技術的に難しいエチュードです。
『練習奇想曲』とありますが、その名の通りこれまでのシンプルな美しいエチュードとはまた違って、無調性の曲や調性感が薄い曲が多いですね。ですので読譜力や技術はもちろんのこと、そういったいわゆる現代曲の素養もある程度必要になります。
24のやさしい無調練習曲(ラクール)
こちらは冒頭に出てきたラクールの書いた、無調性のエチュードです。
無調性というのに聞き馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、普通曲というのはハ長調とか、へ長調といった調性があり、その枠の中できれいに聞こえるように音を選んでいくんです。
しかし無調性というのはそういった制限がないため、ぱっと聴いた感じすごく不思議な、ヘンテコな響きに聴こえるのではないかと思います。
しかしサクソフォーンはそういった無調性の作品が本当に多く、最近は吹奏楽でも無調性の音楽が増えているため、無調性の音楽に触れておくのもとっても大切なのです。
日本の人気サクソフォーン奏者、國末氏の演奏がありましたので、貼っておきますね。
いかがでしょうか?ちょっとヘンテコというか、間違えてる?と思っちゃうようなちょっと奇妙な響きですよね。
でも無調性の音楽に慣れてくると、調性音楽とはまた違ったおもしろさが発見できますよ!
9つの練習曲(ロバ)
こちらは数々のサクソフォーンのための作品を書いてきたクリスチャン・ロバのエチュードです。
クリスチャン・ロバはサクソフォーンができるギリギリをせめてくると言いますか、特殊奏法なんのそのみたいな雰囲気で曲を書きます。
ですからこのエチュードもそこが学習課題で、循環呼吸しっぱなしの曲があったり、高速のスラップタンギングが求められたりします。
ただこれら特殊奏法も、今では普通にできる人が増えてきましたので、そういった奏法を学ぶのにはちょうど良いエチュードですね。
フランス在住のサクソフォーン奏者、伊藤あさぎさんの、『ジャングル』の演奏動画をご紹介します。
最後に
いかがでしたでしょうか!初級者向けから超上級者向けまで、著名なエチュードは一通りご紹介できたかなと思います。
この他にもおもしろいエチュードはたくさんありますから、是非探してみてくださいね!ではまた!
サックスをもっと頑張りたいけれど、教本がいっぱいあって分からない…
専門的に学んでいる人は、どんな教本を使っているんだろう?