サックスの低音が裏返るときの解決策・対処法【サックスレッスン備忘録】

みなさまこんにちは、もつでございます。

新しく、「レッスン備忘録」という記事をアップしてみることにしました。この記事では、主に私がサックスレッスンをしていて気付いたことや、考えたことをまとめたいと思います。

今はレッスンをしておらず、せっかくのレッスンノウハウがどんどん記憶の彼方へ飛んでいってしまうので、忘れないうちに……ということです。

さて、そんなレッスン備忘録。最初のテーマは「サックスの低音が裏返るときの解決策・対処法」です。

サックスの低音は、なぜ裏返りやすいのか

そもそも、なぜサックスの低音は裏返りやすいのでしょうか?

これは、サックスが「円柱」ではなく「円錐」の形であることが、大きく関係しています。

サックスは、マウスピースからベルにかけて、管体がゆるやかに広がっていく形状をした楽器です。

そして、高音域は穴(トーンホール)がたくさん開いて管が短く、低音域は穴が塞がって管が長くなっていきます。

このように、サックスは低音域に行くにしたがって管が長くなると同時に、管の太さまで変わってしまうため、抵抗感が大きく増してしまうのです。

この管の開きを「テーパー」と呼び、楽器メーカーはテーパーの具合を調整することで低音の出しやすさを改良します。本記事では詳しく触れませんが、気になる方はぜひ調べてみてください。

【結論】プロに見てもらったほうが早い

まず、「低音が裏返るなぁ」という方に言いたいのは、自己判断せずプロに見てもらったほうが良いということです。

この後、サックスの低音域が出にくい際の原因について書いているのですが、全て読み切れる人はいるのか?というくらいボリュームです。そのくらい、低音域が出ない原因は多岐に渡ります。

この膨大な原因と考えられるものから、自分が当てはまるものを見つけるのは至難の業。つまり基本的に自己判断するのはかなり難しいのです。

なので、できればプロの方に演奏を聴いてもらって、どこが悪いのかアドバイスをもらった方が良いと個人的には思います。その方が、時間もお金もかかりません。

ただ、周囲にプロの先生がいないという方や、音楽教室がないという方は少なくないと思います。また、学生さんだとなかなかプロのレッスンを受けるのが難しい場合もあるでしょう。

そんな方に向けて、私が把握している限りの「低音が出ない原因」をまとめます。参考になれば幸いです。

サックスの低音域が出にくい際の原因

サックスの低音がうまく出ないというのは、初心者からプロまでみんな悩まされる部分です。

どれだけ良い楽器を使っても、良いリードを合わせても、やっぱりサックスは低音域が出にくい楽器です。そのため、さまざまな部分を調整して、少しでも低音がきれいに出るように工夫しています。

サックスの低音をきれいに出すには、低音が出にくくなる原因を知るのが一番です。私が考える低音が出にくい際の原因をいくつがご紹介しますので、低音の改善にむけて、ひとつの参考にしてください。

楽器の状態が良くない

根本的な問題ですが、アマチュアの方の楽器を触らせていただくと、楽器の状態が良くないケースが多いです。

これはプロレベルどうこうではなく、単純に「これは吹きにくいだろう」というレベルのものが珍しくありません。

楽器の状態が良くないと、低音が出にくいのはもちろんですが、変な奏法の癖がついてしまって余計に低音が出にくくなっているケースもあります。

初心者〜中級者の方だと、楽器の状態を判断するのは難しいと思いますので、もし以下のような症状があったらリペアマンに見てもらいましょう。

接続部分がぐらぐらする

いわゆる「U字管」と呼ばれる部分は、初期不良やちょっとした衝撃で接続が甘くなっているケースがよくあります。

買ったばかりの商品でも、もともと接続がしっかりしておらずぐらつくものがまれにあるので、ガタつきがあればリペアマンに見てもらってください。

前述の通り、低音域は管をながーく使いますので、U字管のあたりがうまく接着されていないと、管の端っこまで空気がうまく通らず、低音がしっかりと出ません。

この状態で練習を続けると、無理に低音を出すような奏法が身についてしまうので、早急にリペアをしてください。

タンポが古い

タンポが古い場合も、穴(トーンホール)がしっかりと塞がらず、低音域が出にくくなります。

低音域が出にくい場合、この「タンポ不良」か「キーバランス不良」が要因となっているケースがほとんどではないでしょうか。

低音域を吹く際は、キーをたくさん押さえて穴を塞いでいきますが、タンポが古いと0.01ミリ単位で隙間が空いてしまうため、穴がきっちりと塞がらないのです。

そのため、低音を出すために適切な管の状態にならず、空気が適切に流れないため、低音域が出にくくなります。

キーの塞がりが悪い

キーの塞がりが悪い場合も、低音が出にくくなります。

原因はタンポが古い場合とまったく同じで、穴がしっかりと塞がらないためです。

サックスのキーは結構繊細で、穴とキー(タンポ)がしっかりと平行に塞がる必要がありますが、これがちょっとしたことでバランスが崩れてしまいます。

また、サックスはやたらめったらパーツ数が多いため、どこかの1パーツがちょっと調子が悪いだけで、連鎖的にいろいろな不具合が出たりするのです。

低音がうまく出ない原因が、左手側のキーにあったというケースもまったく珍しくありません。

本当に世話が焼けます、サックスは。

キーのバネが強すぎる・弱すぎる

私が生徒さんのサックスを触っていて、たまに感じたのが「バネ圧がおかしい」というものです。

サックスは、押さえたキーが元の状態に戻るように、バネが仕込んであります。

このバネの強さが極端に強かったり弱かったりして、押さえる力とまったく釣り合っていない楽器がたまにあるのです。

低音域のキーのバネ圧が極端に強く、小指にかなり力をかけないとキーが押さえられない楽器もありました。

こうなると、力む原因にもなりますし、ちょっと力が緩んだだけでキーが開いてしまう(穴が塞げなくなる)原因にもなります。

ただし、このバネ圧は人それぞれ好みもありますし、リペアマンの好みもありますし、もっと言えばリペアマンが所属しているお店の方針とかもあるので、絶対的な正解はありません。

もし「低音のキーを押さえるのが大変」と感じる場合は、ひとまずプロの方に見てもらって、バネ圧が適切か判断してもらうと良いかと思います。

楽器の状態が良くない場合のチェック項目
  • U字管の接続部分をチェック(過度に動かすのは絶対NG!)
  • タンポ(パット)が痛んでいないかチェック
  • キーからガチャガチャと音がしないか、動きがぎこちなくないかチェック(これは、アマチュアの方だと自己判断はかなり難しいと思います)
  • バネ圧が強すぎない・弱すぎないかチェック(これも自己判断は難しいので、楽器店の方にチェックしてもらってください)
  • 基本的には、楽器屋さんに見てもらうのがベスト

リード・マウスピースが良くない

リードやマウスピースが良くない場合も、低音がうまく出ません。

具体的には、「マウスピースの開きが広すぎる」か「リードが硬すぎる・柔らかすぎる」のいずれかです。

マウスピースの開き・種類

マウスピースの開きは、もちろん種類によりますが、例えばセルマーS90なら180、メイヤーラバーなら5番、ヤナギサワメタルなら7番くらいが平均的な開きです。

よくあるのが、プロが使用している開きの広いマウスピースを購入して、使いこなせていないケースです。

まず、プロは吹くための筋肉が相当ついています。そのため、開きの広いマウスピースや硬いリードでもそれなりに扱えるのです。

このセッティングを吹くための筋肉が付いていない人が吹くというのは、筋トレ初心者が200kgのベンチプレスをするようなものです。ケガをします。

この「ケガをします」というのは比喩でなくそのままの意味で、唇や顎を痛めたり、力むあまり腕や首などの筋肉を痛めたりします。

そのため、まずは色々と試奏してみて、プロにも相談しながら、自分に適切なセッティングを探しましょう。

リードが硬すぎる・柔らかすぎる

これもかなり多いのですが、リードが硬すぎて低音が出にくくなっているケースがよくあります。

ピアノ(弱音)で吹く際に「サー」と息のノイズがするようであれば、リードが硬すぎる可能性が高いです。

このリードが硬すぎるというのは、番手だけを意味するのではありません。同じ番手でも反応の良い・悪いがあり、初心者の場合は「番手は良くても個体が悪い」ケースも非常に多くあります。

また、リードが柔らかすぎる場合も、低音がうまく出ない原因になります。

こうした「リードと息の相性」も自己判断は結構難しいので、プロに見てもらった方が早期解決できます。

マウスピースとリードの相性が良くない

例えば、Selmer S90 170に青の2半を付けていたり、S90 200に3半を付けていたりと、マウスピースとリードの組み合わせ方が適切でない場合も、低音が出にくくなってしまいます。

もちろん、この組み合わせは人それぞれなのですが、「オーソドックスな組みあわせ」というのは存在し、そこから外れているほどコントロールは難しくなっていきます。

初めから突拍子もない組み合わせで吹いていると、奏法もかなり癖がついてしまい、修正困難になってしまうこともあるでしょう。

こうした組み合わせは、管楽器の専門店に行けば「おおよそこのマウスピースにはこのリードを組み合わせることがおおい」という情報を教えてもらえるので、まずは相場を学んで、相場通りのものを吹いてみてください。

王道を知ることは、自分に合ったセッティングを見つける近道になります。

リード・マウスピースが良くない場合の解決策
  • プロ奏者や楽器店の店員さんに、セッティングの相談をする
  • p(ピアノ:弱い音)で中・低音域をロングトーンができるかチェック(サーっといううノイズが乗る場合は、リードが硬すぎる・マウスピースの開きが広すぎる)
  • mf〜f(メッゾフォルテ・フォルテ:中庸な音量・強い音)で高音域をロングトーンして、問題なく音が出るかチェック(出ない場合は、リードが柔らかすぎる可能性)
  • ff(フォルティッシモ:非常に強い音)でロングトーンをしてみる(リードが閉じたままになってしまう場合は、リードが柔らかすぎる可能性)

アンブシュアが良くない

アンブシュアがよくない場合は、楽器やリードなどをどれだけ良くしても、低音域が裏返ります。

低音域がうまく出ない場合は、「噛みすぎ」と言われますが、「噛まなさすぎ」でも低音が出にくくなるケースがあります。

噛みすぎて低音が出ない

噛みすぎの場合は、低音域が裏返りやすくなります。

こうした「噛みすぎアンブシュア」は癖になっている場合が多いため、すぐに治すのが難しいですが、時間をかけて根気強く治していきましょう。

噛みすぎアンブシュアの具体的な改善方法には、「ノンタンギング練習」がおすすめです。

ノンタンギング練習とは、その名前の通りタンギングをせずに音を立ち上げるトレーニングのこと。低音息の指使いで息を入れて、うまく音が立ち上がるポイントを探します。

このとき、アンブシュアだけでなく息の温度・スピード・角度・圧力などさまざまな要素を変えてみましょう。暖かい息を入れたり、冷たい息を入れたり、下向きに入れたり、上向きに入れたり……。

こうした練習を続けて、低音域が出やすいポイントが探せると、おのずとアンブシュアは適正な圧力になっているケースが多いと思います。

ポイントは「アンブシュアを緩めようとしないこと」です。サックスはアンブシュアを締めすぎても緩めすぎても良い音が出ません。なので、噛み具合(締め具合)をやみくもに変えるのではなく、別のほうに意識を向けて、結果的にアンブシュアが適正な形になっているというのが良いと考えています。

アンブシュアが緩みすぎの場合

アンブシュアが緩みすぎの場合、基本的には「息を入れすぎている」ケースが多いと思います。

低音域はたくさん息を送る必要がありますが、まとまりの無い息を「バーッ」とやみくもに入れてしまうと、低音域がうまく出ないのです。

この場合は、「上手な人に教わる」のが良いと思います。

というのも、「適正な音量」「適切な音色」などの基準は、上手い人の音を間近で聴かないとなかなかイメージできないからです。

上手い人に吹いてもらえば、「このくらいの音量で演奏すれば良いんだな」「ということは、なんとなく息はこのくらい入れればいいのかな」といったことがすぐに分かります。

そうすれば、息を大量に入れすぎて、アンブシュアが緩みすぎてしまう現象を改善できるのです。

ただし、周りに上手い人がいないという方も多いでしょう。

その場合は、とにかく今よりも息をまとめる意識をもって吹いてみるのがおすすめです。おおよそ2〜3mmくらいの太さの息を送り込むようなイメージで、低音を吹いてみてください。

ただし、息が適切でない場合、楽器のセッティングも適切でない場合が多くあります。その場合はどれだけ練習しても、低音域はうまく出ません。

こうしたセッティング面を確認してもらうためにも、できるだけ上手い人に見てもらったほうが良いでしょう。

アンブシュアが良くない場合の解決法
  • ノンタンギング練習で、息を入れるポイントをつかむ
  • 息を2〜3mmの太さで入れるようなイメージを持つ

タンギングがよくない

タンギングが良くないというのも、低音域がうまく出ない原因になります。

具体的には、タンギングをする際に舌に力が入る、口の中が狭くなりすぎるなどです。タンギングはリードに舌を付けて行いますが、その際に舌が持ち上がりすぎてしまって、口の中が極端に狭くなり、低音が裏返りやすくなるケースがあります。

また、舌に力が入ってしまうと顎も連動して力が入るので、アンブシュアが締まってしまい、低音が裏返るといったケースもあります。

試しに、舌(ベロ)に力を入れてみてください。その状態で顎を開閉しようとすると、スムーズに顎関節が動かないと思います。このように、舌と顎は連動しているため、舌に力が入ると顎にも力が入り、結果としてアンブシュアが固まるのです。

さて、こうした「舌に問題がある」場合も、まずは息だけで音を立ち上げるトレーニングをしてみましょう。低いドから高いドまで、2オクターブの音がタンギングなしで綺麗に立ち上がればOKです。

そして、この息だけトレーニングと併行して、タンギング練習を行います。これは、普通のタンギング練習で構いません。テンポ60〜100程度で、4分音符・8分音符・3連符・16分音符のトレーニングを行います。

このように、「低音域にふさわしい息づかい」と「きれいなタンギング」をそれぞれ別に練習することで、スムーズに低音域の奏法を改善できます。

タンギング(舌)に問題がある場合のトレーニング方法
  • ノンタンギングのトレーニングをする
  • タンギングのトレーニングをする

ストラップの長さ、楽器の角度が良くない

意外と知られていないのが、ストラップの長さで低音域の吹きやすさが変わるという点です。

試しに、ストラップを普段より長くした状態で、高いレ〜ファ(サイドキー)や低音域(下のレ〜シ♭)を吹いてみてください。

反対に、普段より短くした状態で、試しに、ストラップを普段より長くした状態で、高いレ〜ファ(サイドキー)や低音域(下のレ〜シ♭)を吹いてみてください。

どうでしょうか?恐らくストラップを短くすると高音域が出やすく、長くすると低音域が出やすくなったと思います。

反対に、ストラップを短くすると低音域が出にくく、長くすると高音域が出にくくなったのではないでしょうか?

このように、ストラップの長さ、もっと言うと「口に対する楽器の角度」は、低音域や高音域の出やすさに直結します。

そのため、鏡を見ながらプロの奏者と見比べてみて、ストラップの長さを調節してみましょう。

ただし、お手本にするプロは、クラシックならクラシック奏者、ジャズならジャズ系の奏者にしてください。これは、ジャンルによって適しているストラップの長さが若干異なるためです。

そして、やはりストラップの長さに関しても、自分ではなかなか掴めない部分があると思います。そのため、上手い人に見てもらったほうが近道です。

ストラップの長さに問題がある場合の改善方法
  • 鏡を見ながら練習をする
  • 上手い人のフォームを参考にする

そもそも息がしっかりと吸えていない

低音域は息を大量に使うため、ブレスが適切に取れていない場合も、音が出にくくなってしまいます。

特に、日本人は小柄な方が多いため、肺活量の問題からサックスを吹くにはあまりにも息が吸えていない・吐けていないケースが多いように感じます。

そんなブレスに問題がある方におすすめなのは、「8:8トレーニング」です。

やり方は簡単で、8拍かけて息を吸って、8拍かけて息を吐きます。このトレーニングでのポイントは、苦しくなっても吸い続けることです。

苦しいくらい息を吸うと、自然と息が出ていくと思います。そのくらいの息を吸えていると、低音域がもっと楽に出せるはずです。

そして、8:8トレーニングをして息が深く吸えるようになったら、そのくらいの息を4拍・2拍・1拍でも吸えるようにしてください。

そうすれば、曲中でも余裕を持って低音域が演奏できるでしょう。

ただし、このトレーニングは息を苦しいくらい吸うので、体に力が入りやすい点に注意が必要です。1日3〜5分程度に止めて、自分の吸えるマックス量を確認するため、そして吸う力を鍛えるためにご活用ください。

ストラップの長さに問題がある場合の改善方法
  • 「8:8トレーニング」を試してみる

まとめ

いかがでしたでしょうか?私がレッスンした際の記憶も呼び戻しつつ、低音域が出ない原因と改善策をご紹介しました。

ここまでお読みくださったみなさま、本当にお疲れ様でした……。

まとめると、以下のようなことがポイントです。

低音域が出にくい・裏返る場合の解決策
  • 楽器の状態をプロに見てもらう(リペアマン、プロ奏者)
  • リード・マウスピースが自分に合っているか確認する
  • アンブシュアのチェックをする
  • タンギングが良い状態かチェックする
  • ストラップの長さが適切かチェックする
  • ブレスが適切にとれているかチェックする

上記のように、低音域が出にくくなってしまう原因はさまざまです。そのため、自力で判断するのはかなり難しいでしょう。

できればプロに見てもらったほうが良いのですが、自力でどうにかしなくてはならない場合は、今回ご紹介したような内容を参考にしながら、地道に改善してみてください。

何かご質問があれば、TwitterやYouTube、こちらのコメント欄で質問してください!

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音大卒業後、某企業でレッスンや楽器販売などを行う。 2022年からライター兼ミュージシャンとして独立。 「おひとりさまスクエアシリーズ」 「実力でぶん殴られたシリーズ」などを投稿