みなさまこんにちは、もつでございます。
今回は【クラシックサックス・ジャズサックスの違い】について、3つのポイントで話していきます。
結論からお話すると、クラシックサックスとジャズサックスの違いは
①奏法
②楽器
③考え方や目指しているもの
の3つが大きな要素だと考えています。
上記3点について、細かくみていきましょう!
はじめに:クラシックとジャズの違いとは?
本題に入るまえに、まずクラシックとジャズの違いについて確認しておきましょう。
【クラシック】とは、いわゆる古典的な西洋音楽です。具体的にはバッハより前のグレゴリオ聖歌などから、第二次世界大戦以降の現代音楽まで含んで使うことが多いでしょう。
つまり6世紀ごろに起こった教会音楽から、その流れの上で発展してきた音楽を指すのが「クラシック」だと言えます。
わかりやすい例だと、先述の教会音楽や、コンサートホールで聴くようなオーケストラで奏される音楽などがあります。バッハやベートーヴェン、ショパンなどはご存知の方も多いでしょう。
一方【ジャズ】は、19世紀から20世紀にかけてアメリカで起こった音楽で、ブルースやラグタイムを起源とする音楽です。
起源を細かくみると、いわゆる「西洋音楽・教会音楽」と「黒人音楽」に行き着きますから、クラシック音楽から派生した部分もあると言えるでしょう。
クラシックと比べメロディーなどを即興でアレンジしたり、メロディーを奏したあとにアドリブソロが入ったりする、即興性の高さが特徴といえます。
クラシックとジャズの音楽ジャンルとしての違いがわかったところで、さっそくサックスにおいてのクラシックとジャズの違いを見ていきましょう。
①奏法の違い
奏法からして、クラシックサックスとジャズサックスは異なります。大きな違いは、やはり口の形(アンブシュア)です。
まず【クラシック】
ほぼ全員は、「シンリップ」というアンブシュアで演奏しています。これは下唇を下の歯に巻き込むようにする奏法です。下唇を噛んでいただくと、巻き込む感覚がわかりやすいと思います。
対して【ジャズ】
こちらは、「ファットリップ」というアンブシュアで演奏する方が多いです。下唇を巻き込まず、自然なかたちでマウスピースを咥える奏法ですね。
ここからは持論ですが、巻き込み具合というのはジャンル問わず人それぞれで、特にジャズはシンリップのような人も多いです。
これは唇の厚みも関係していて、例えば唇が厚い人はクラシックでもあまり巻きすぎないようにします。音がこもった印象になりやすいからです。
なのでこうした下唇の巻き具合やアンブシュアは、先人たちが試行錯誤しながら目指す音が出る口を探しだした結果だと言えます。
②楽器の違い
楽器もそれぞれ異なる傾向があります。
まず最初は「楽器本体」について解説しましょう。
まず【クラシック】
クラシック奏者は、ヤマハとセルマーで8割と言えるくらいにシェアが偏っています。次いでヤナギサワ、クランポンなどです。
塗装はラッカーが多いですが、プロを見ると華やかなサウンドが特徴の金メッキも多いです。
一方【ジャズ】
こちらはセルマー、ヤマハ、ヤナギサワ、キャノンボールなどクラシックに比べればシェアがバラけてる印象です。また、KINGやCONNなど今は存在しないヴィンテージブランドを使用している方もいらっしゃいますね。
クラシックに比べて塗装のないアンラッカーの楽器や、ヴィンテージの楽器を使用する人が多いのも特徴でしょう。吹きやすさや音程のとりやすさでなく、当時のサウンドというのを重視しているのだと思います。
次に、「マウスピース」を見ていきましょう。
まず【クラシック】
セルマーとバンドーレンのマウスピースが9割といってもいいでしょう。ジャズ系と比べ開き(マウスピース先端とリードの隙間)が狭い傾向があります。
材質は、ゴムの一種であるエボナイトが主流です。最近発売されたセルマーの『ドゥラングルモデル』は珍しく一部金属が使用されていましたが、あのようなマウスピースは大変稀で、ほとんどのクラシック系奏者はエボナイトだけでできたマウスピースを使用しています。
一方【ジャズ】
セルマーやバンドーレンもありますが、メイヤー、ゴッツ、ウッドストーン、クラウドレイキーなどメーカーでみてもかなり多く、シェアはバラバラという印象です。
クラシック系と比べると開きが大きく、音量が出しやすいものが好まれる傾向があります。
またメタルマウスピースなど金属製マウスピースを使用する方も多く、特にフュージョンやファンクの奏者はメタルマウスピースを使用する傾向にあります。
メタルマウスピースはエボナイトよりも派手な音色が得やすく、音量も出しやすいです。そのためバンドなどの中で演奏する機会が多い奏者は、メタルマウスピースを使用する傾向があります。
最後に【リード】を見ていきましょう。
まず【クラシック】
コシがしっかりとして、音をまとめやすいリードが好まれる傾向です。バンドーレンを使用している奏者が圧倒的に多いですが、最近はダダリオ(旧リコ)を使用している奏者も増えました。
具体的には、バンドーレンtraditional(青箱)が圧倒的、ついでV12(銀箱)、ダダリオはレゼルヴを使用している方が多いです。
さらに、最近は須川展也氏など人工樹脂のリード(プラリード)を使用するプロも増えてきました。具体的にはレジェールのシグネチャーシリーズを使用する奏者が多いです。
一方【ジャズ】
比較的柔軟なリードが好まれる傾向があります。メーカーはこちらもバンドーレンが多いですが、リコを使用する方もクラシックに比べ多く、最近はウッドストーンなどを使用する方もいるようです。
ただリードは葦という植物でできているために新規メーカーが参入するのは難しく、マウスピースや楽器本体に比べるとメーカーも少ないため、シェアもバラけにくいです。
楽器本体、マウスピース、リードについて、クラシックとジャズで好まれるものを比較しました。こうして見ると、やはりジャンルごとに好まれるものの傾向はあるようです。
③考え方や目指すものの違い
ここが大変重要です。
ここまで奏法や機材の違いについて書いてきましたが、これは「変えればそのジャンルの音が出せる」というわけではありません。
「そもそも目指す音が違い、その音を出しやすいのがたまたまそういった奏法・機材だった」ということです。
では、「考え方」や「目指すもの・音」はどう違うのでしょうか?
まず【クラシック】
楽譜に忠実が基本です。楽譜の音を勝手に変えたりは基本的にNG、「作曲家が思い描いた音楽はどういうものか?」を掘り下げて掘り下げて…というのがクラシック音楽家の考え方です。
目指す音は言い表すのが難しいですが、ひとつは「均一」というキーワードがあると思います。サックスは音域によって音色の差がかなりありますが、それらをなるべく均一になめらかに繋げられるように練習します。
またサックスはクラシック音楽においては新しい楽器ですから、そういう意味ではヴァイオリン、フルート、クラリネット、トランペット等々の歴史が長い先輩楽器の音色から、良いなという部分を手本にすることも多いです。
一方【ジャズ】
よく自由といいますが、個人的には「個性爆発!」というよりも、楽譜から脱線することは多々あれど、これまでのジャズの歴史や理論などを踏まえている。むしろ大きな意味での枠組みがしっかりあるイメージです。
しかしやはりクラシックに比べ即興性が高い音楽ですから、周りのメンバーの動きやオーディエンスのリアクションなどを見ながら、「この後どうしようかな?」と考えてる部分がクラシック奏者との大きな違いでしょうか。
目指す音は、こちらも一言で言い表すのは難しいですが、クラシックに比べると音域ごとのカラーを大事にしている印象です。低音をバコーンと出したり、ノイジーに出したり、高音域をきゃーっと出したり、音域ごとの音色の違いに抗わない、むしろ活かしている印象ですね。
またクラシックと比べノイズが多いですし、音色の幅は広いように思います。ホワイトノイズまみれだったり、ものすごい荒っぽかったり、すごくピュアな音色だったり、そういったフレーズに合わせた音色の使い分けは、クラシック以上にハッキリしていますね。
まとめ
というわけで、私なりの考えではありますが、【クラシックサックスとジャズサックスの違い】について書いてみました。
これらはあくまで傾向ですし、例外もものすごくあります。それぞれ専門でやっている人からすれば「そんなことないよ」ということもあるかもしれません。
私はクラシックが専門ですが、クラシックの項目については「そんな単純なもんでもないけど」と思いながら書いたりしていました 笑。
しかし一方で、こうした違いについて疑問に思うサックス奏者は多いと思いますし、ひとまず入り口として、ざっくりとでも参考になる情報がお伝えできればという気持ちです。
より細かい内容については、今後書いていければと思っています。どうぞよろしくお願いします!
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